[本]「推し、燃ゆ」感想「推しを推そう。」

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芥川賞直木賞受賞作品を読むことはそれほどないのだけれど、タイトルに惹かれ、これは読むしかない、と。

推しが燃えた。

の一文から始まる。

 

タイトル。惹きつける出だし。

 

作者の年齢や人物像などはあまり情報として入れない方が興味深く読めるのだけど、ニュースで既に彼女が「現役大学生」だという事を知っていた。

 

自分の子供よりも年齢の若い方の書いたもの。ううううん、やっぱりその情報は知らない方が良かったかな。

 

言葉の使い方や表現が私にとってとても新鮮。アマゾンの感想を読んだけど、かなり批判もされてるんだなぁとびっくりした。文学や芸術なんて人それぞれな感想を持てばいいわけで、私はこの小説をかなり面白く読んだ。

 

私も推しがいる。このブログにたびたび取り上げてもいる。

 

それでも、この主人公のように推せるか、と聞かれたら口ごもってしまう。それは私と彼女の年齢の違いもあるだろうし、彼女の持つ「重さ」が私にはなかったことも関係あるかもしれない。

 

女性特有のひと月に一度くるあの「重さ」。身体に感じる具体的な「重み」も抽象的な「重み」も全て重い。家族も重い。気持ちを共有しえない母親が重い。

 

とにかく重い。

 

その重さから逃れられるただ唯一の道が「推しを推す事」。

 

<病めるときも健やかなるときも推しを推す>

 

学校や家に居ても重いだけ。自分の部屋だけが、推しで溢れさせた部屋だけが自分の居場所。サンクチュアリ。

 

小さいころから姉に比べて勉強ができなかった、と回顧する主人公だけれど、推しについてのブログの中ではとても饒舌だ。オンラインでやり取りするブログの読者との繋がりだけが彼女の生きる場所になっている。

 

そんな彼女の「推し」がなぜかファンを殴ったという。そして炎上。

 

その理由は最後まで明かされない。その一件から生じる「推し」の変化。自分の変化。高校からドロップアウトすることで家族からも独立するよう急き立てられ、どんどん自分の居られる場所が無くなって行く。

 

とてもリアルだ。

 

学生で居ればこそ親の庇護を得られるわけで、そこを離れれば自分で食べていくことを求められてしまう。

 

当たり前だ。

 

しかし。推しを推さざるを得ない主人公の有り様をだれが批判できようか。誰が笑えようか。

 

父親が、母親が、もっと彼女に気を配っていたなら。もっと余裕をもって生活できていたなら…

 

否。親なんてそんなもの。親なんて…

 

エールを送りたい。応援したい。あなただけじゃない。孤独はあなただけのものじゃない。

 

あなたの中での喪が明けたら、その時は… また…

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お越し頂きありがとうございました。

あじさい

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