[映画]『花束みたいな恋をした』「ふたりの共感と齟齬」<ネタバレ感想>

映画

観てきました。

映画『花束みたいな恋をした』公式サイト
主演:菅田将暉、有村架純、脚本:坂元裕二、監督:土井裕泰 大ヒット上映中!

 

Twitterを見てると、かなりの感想ツイートが流れてきていて話題になってるぞって自分の中でも盛り上がっておりました。

 

自然と自分と重ねてる

これを観た後、10代の若者がどういう感想を持つのか、いちばん気になりました…

 

なぜかと言うと、クライマックスで、自分が若かった時のこと、これまでの来し方など人生を思い出す仕組みになってるわけで、その「過去」の積み重ねのない高校生や大学生と、私のような50代の中年が観るのとではまったく感じ方が違ってくるだろうな…と。

 

ファミレスジョナサンでのあのシーン。ふたりが過去を思い出すと同時に、私も自分の過去を思い出す。

 

過去を思ってもいまさらどうしようもなく、何もできないのだけれど、キラキラと一生懸命恋をしていたその時、あの時間は真実だった、あの瞬間のふたりは確かにそこに居た、間違いなくふたりは恋に落ちて一緒に居たいと思っていた。

 

残酷な時の流れと現実、それは麦と絹ふたりのものであり、観ている観客のものでもあった。たとえ彼らのような一生に一度の恋をしてないとしても。

 

私たちはこの映画を通して自分を振り返り、普段忘れているけれども、この自分にも若い時間があったのだ、と実感する。

 

そのリアルさは、坂元氏が使う本当に存在する小説やマンガや歌やタレント(押井守、ゴールデンカムイ、ゼルダの伝説、SMAPの解散など)に依拠する固有名詞だったり、小物の使い方だったり(お揃いのスニーカー→黒い革靴、イヤフォンのLとR)、これまで氏が書いてきたドラマでもそうだったなぁと。

 

セリフの中に入り込む言葉が私たちの生活と地続きだと感じさせるテクニックなんだろうと思います。

 

麦と絹の齟齬

なぜふたりは別れてしまったのか。

 

同じ小説を好きで、ほとんど自分と同じ本が並んだ本棚を持つ絹(有村架純)と麦(菅田将暉)。本のしおりに映画の半券を使うのも一緒。

 

同じマンガを読んで泣き、笑う生活。

 

そこに入ってきたのは、「社会」だった。麦と絹が出会った時には大学生という肩書でいられた。その「モラトリアム」期が終わってしまう。

 

ふたりの聖域である調布駅から歩いて30分の多摩川の見えるマンションに、突然やってくる双方の親たち。

 

彼らは絹と麦にモラトリアム終了の「宣告」をしにきた。

 

「現実」は「お金」が要る。

 

「お金」を得るには「労働」が要る。

 

「労働」がふたりの中に齟齬を生まれさせる。

 

それまで共通の好きなものを好きなように愛でていればよかった生活が、「共通ではない価値観」を持つ「労働」に侵されていく。

 

ふたりの間に家事をどうするとか食事をどうするとかそういった会話はない。そこにふたりの考え方の違いがあるとの描写はない。仕事終わりであろう麦がカップ麺を食べている姿があったくらい。きっと意図をもって描いてないんだろうと感じる。

 

それでも、決定的だったのは、麦がもつ価値観が垣間見えるセリフだった。

 

麦はやっと入れた会社で社畜のように働く。家にも仕事を持ち帰る日々。土日の出張もある。ちょっとしたことで口喧嘩になり上手くいかないふたりが考える解決策の違いが吐露されるシーン。

 

麦は「結婚」しよう、という。

絹は、好きなことを「労働」に取り入れよう、という。

 

ここの違い。麦は「結婚」という制度で絹を繋ぎ止め、性差による役割分担をしていこうと匂わす。自分が働いて、絹は何もせずに家に居ればいい、と言ってしまう。

 

一方絹は、合っていない労働で疲弊するんではなく、手にできる金額が減っても好きな事が生かせる方を選ぶことにした、と言う。

 

麦が男というジェンダーを生きる中、どうしようもなく刷り込まれた役割から抜け出せず、そこに愛がなくても子供を作って手を繋いで家族として生きていきたいと言ってしまう、その悲しさ。

 

男と女が一緒に居ることの意味は何なのだろう。私も結婚している身として考えるんだけれど、実はよくわからない。

 

ふたりの道は交わうことはないのか

2020年。

 

同じカフェでそれぞれの恋人らしき人と一緒に居る絹と麦のシンクロ感を醸し出す会話。外に出たあと、後ろを向きながら手を振るふたり。

 

果たしてこのふたりが元さやに納まったりすることはないのか。

 

私はなぜか、何年か経った後、またお互いがお互いの元へ戻りたい、と思う未来が見えてしょうがなかった。希望的観測に過ぎないのだけれども。

 

終わりに

 

「結婚」そのものを解決にしなかったふたりを描いた坂元氏の視線がとてもいい。だからこそ、その先を進むふたりが見たい。「結婚」を越えるふたりを。続編を是非お願いしたいです。

 

余韻に浸りたい、と思う映画でした。感想を誰かと喋り尽くしたい。言い合いたい。

 

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お越し頂きありがとうございました。

あじさい

コメント

  1. 理花 より:

    これは観なくてはいけませんね
    坂元作品はあじちゃんと語りたいです☆彡

    • あじさいあじさい より:

      理花ちゃん!!!!!
      お久しぶり~嬉しいな。

      観てね観てね!!!ほんと語り合うための映画みたいな感じなのよ~~!!!

      理花ちゃんがどこが気に入ってどこに揺さぶられたか、知りたいです♪

      待ってるね。

      あじさい