2か月ぶりに映画館へ。
この映画はホラーのようだし、ハッピーなエンディングじゃなさそうだし、わざわざそういうのはなぁ、と敬遠していたのですが、友人がどうしても観てほしいと言うので、観てきました。

親という暴力
この映画を観ながら、私が頭に浮かんだのは、
親って暴力じゃん、私だって子どもへの暴力になり得るし、なってるのかも
という事でした。
小春と家を出て行った母。
大悟と母美智代。
2人とも母との関係から受けた傷を抱えている。大悟は妻に裏切られながらそのまま彼女を亡くすという凄絶な過去も持っている。
小春は「母親のようには絶対ならない」「虐待する親は親失格」
大悟も「自分の母のように子どもには手をあげない。子どもを信じる。子どもが全て」
これ、結構普通に思う事。ありきたりな事で。映画全体を通して、彼らが特別なんかじゃないって訴えてるんですよね。
ヒカリが「絶対に内緒ね」、と小春に言うのに、小春は大悟に喋ってしまったり(後からその正反対のことをやられてしまう)、大悟がヒカリ可愛さでやってしまうこと(二度学校にのりこむ)、言ってしまうこと(周りはみんなバカだ等)…
これ、私全部やりました…
親と子って、どこまでいってもあるべき正解なんてないし、正解だと信じて行動するしかなくて、正解のはずなのに狂気の世界へ足を踏み入れてしまう恐ろしさを孕んでいる…
親子の持つ歪み、光と影、信頼と不信、血の繋がりがなくても、いや、ないからこそ、「良い母親」にならなければいけない、と周りに追い込まれ、自分を追い込む小春の目に光がなくなり、一線を越えるあの瞬間。正しさを盾にして、正しさを盲信することで自ら狂気の内側へと走っていってしまう。
あり得ないことじゃないんだよ…と震えましたね…
嘘と真実
ヒカリは本当に友達を突き落としたのか。
突き落としてないなら、なぜ男の子はうそをついたのか。
突き落としているのなら、なぜラストにあの女の子は「殺してない」という手紙を書いて渡したのか。
わからない。
わからない、ようにこの映画は見せている。だから永遠に謎のままでいいんだと思う。
事実はどうなのか、真実はどうだったのか。そんなことは3人にとってどうでもいい。 それがとてもとても怖い。女の子からの手紙を床に落とした小春の眼が物語っているのは、3人だけの世界へ、3人だけは信じあって裏切らないで仲良く暮らす世界に閉じこもっていくということだけ…
あの最後の教室での3人がお伽話のようで、何も起きず起こらずファンタジーの世界に閉じこもってしまったかのようで、全部夢オチだよね、夢オチにしてくれ… と思ってタイトルバックを見てました。
あれは夢。本当の現実はハピエン、ってことでどうでしょうか。
さて。
この映画、賛否両論あるらしいけれど、ツッコミどころも多々あるなぁとも思います。
児童相談所のお仕事はあれでおわり??とか、結婚指輪結局どうして大悟がもってるの??とか、ずっと友人のお店で友人も含めて大声で喋ってるけど他のお客さん大丈夫?とか。わざわざ大雨の日に赤ちゃん連れて友達の夫が医者だからってみせにくるか?とか。
しかしながら最後に言いたいのは、俳優さんたちの演技。特筆すべきだと思いました。
土屋太鳳は、朝ドラの「まれ」以来、いつのまにかあまり得意な俳優さんじゃなくなっていたのだけれど、考えてみたら、最初に彼女を観たのは、「今夜は心だけ抱いて」という2014年NHKプレミアムよるドラマだったんですよ。
この時、田中美佐子演じる母親と入れ替わってしまう役どころだったんですが、ものすごおおおおく良かったんです。
「Wの悲劇」の主人公も演じてたからかもしれないけど、どこか薬師丸ひろ子に似た感じだなぁと勝手に思ってます。
子役さん、すごい。恐ろしくなるほどすごい。でもあの役がトラウマになったりしないといいな…
田中圭。相変わらずああいう役をやらせると右に出るものはいないんじゃないでしょうか。キレ演技もそうだしあのキスシーンの獣っぷりはなかなかでした(獣になれない私たち、でのキスシーンもすごかったけど)
決して後味が良い爽やかな映画です!!とはならないけれど、自分の事も含めていろんなことを考えるし、小春のハピエン路線はどこをどうしたらあり得るだろうかってタイムリープした場合のシナリオも考えたくなるし、私にとって観てよかった、と思える映画でした。
シンデレラもそうだけれど、お伽話って、ブラックさも持ちあわせてて、幸せの中にぽっかりと空いたブラックホールみたいなものが見えて怖くなるっていう感じ、幽霊の出てこないホラーもの風味な映画、かなりクセになる…
「パラサイト」もそうだったけど、所謂ホラーものよりずっとホラーなのが家族かもしれない。
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お越し頂きありがとうございました。
あじさい
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